今秋、女子プロ野球界に衝撃が走った。
来季に向けた大改革を発表すると、週刊誌や多くのメディアに刺激的な見出が踊った。
『「選手半数退団」で消滅秒読み? 』『36名退団で存続の危機』
だが本当にそうだろうか。自ら残留を決めた選手の意志、去り行く選手たちの熱き想い。
今、何が起きているのか、そして今後どこに向かおうとしているのか。
創設1年目から切磋琢磨し続けてきた4人が、
それぞれの立場から女子野球の未来予想図について語ってくれた。
 
岩谷 ニュースを見てビックリしました(苦笑)。ネガティブなことばかりが書かれていたので。
辞める選手だけでなく、私たちも含めて約半数の残る選手にも注目してほしかったです。もちろん来季がありますし、プラスな考えで続けていきたいという思いが選手にはあるので。

三浦 注目されるのは良いことだし、いろんな見方や考え方があっても良いと思うけど、前向きに取り上げてほしいですよね。私は、10年間やってきた身として、来季も引っ張っていきたいと思っています。

今回登場してくれた4人は、女子プロ野球1期生の同志だ。発足してから10年間、切磋琢磨し続けてきた。岩谷選手と三浦選手は来季も現役続行、そして小西選手と碇監督は女子プロ野球を離れる決断をした。それはマイナスな想いによるものではないようだ。

小西 続ける意思はありましたが、構想外となりました。でもプロの世界では当たり前のことです。女子プロ野球も10年は一つの大きな節目だし、ここで次の10年に向けた大きな変革は必要だと思います。

 私の場合、辞める決断をしたのは自分自身だし、続ける選手を応援し続けようと、ずっとチームで言い続けていました。辞める選手たちは、たとえ違う場所、違う形でも女子野球を広めていく活動をしてほしいです。

男子の高校野球でも球数制限や体罰が問題視されている現代。悪いことに対してNOを言える環境づくりが求められるいっぽうで、マイナス面ばかりが大きく報道されれば、野球をやりたい子どもたちが減少し、親もやらせたくないという悪循環に陥ってしまう。それは女子野球でも同じことだ。

 やる人も応援する人も増やしたいのに、やりたくないと思われるように今回報道されてしまったことは悔しいです。私は、プロは実力の世界であってほしいと思っています。結果や過程も含めてプロと言われる人が残っていく世界にしていけば、もっとみんなが行きたいと思ってもらえるところになるのではないかと思います。

岩谷 私は来季の契約よりも前に、選手を続けるのか、指導者になるのかという迷いがありました。ですが、システムが変わると聞いてむしろ、もう少し選手を続けたいという気持ちになりました。新しい制度を聞いたときには迷いや不安もありましたが、今はやってみようという気持ちだけです。

三浦 私は一緒にやってきたメンバーがいなくなることがすごく不安でした。同世代の選手が辞めることも聞いていたので、自分が一番上に立ってやっていくイメージが全然つかなくて……。ただ、他で続けるという考えはできませんでした。女子プロ野球リーグができたことで、また野球をするきっかけを作ってもらいましたし、成長できたので、辞めるならこの舞台で辞めたいという気持ちがあります。

男子プロ野球では契約が変わるのは当然のことでもある。各球団の方針に合わせた編成は毎年のように敢行される。プロは過酷であると同時に、夢を叶え、与えられる場所でもある。女子プロ野球もより本格的なプロ化へ舵を切ることとなる。

小西 11年目の動きとしては正解というか、これしかないと思いました。来季も同じ体制だと言われていたら、自分から去ろうと思っていたくらいです。自分のノートにも「来季は自由契約を作る」と書いていました。その中で新制度の発表があり、拍手したくなるくらい未来が見えたように感じました。

岩谷 今までのシステムは、基本給に加えて、成績を残したら給料が上がる出来高で、それに甘えすぎているところがありました。新しいシステムでは、自分の頑張り次第で収入が変動します。より野球に対して真面目に向き合っていけると思いました。契約が変わることで、今までこんなにしてもらえていたんだということに、若い選手たちが気づいてもらえたら良いなと感じました。

三浦 今まで以上の活躍をすればまた上がることもあるでしょうし、私の場合は、目先のお金のことよりも大好きな野球をやりたいという気持ちで続ける決断しました。

各々が今回の変革を前向きに捉える4名。現在、女子の野球人口は増加傾向にある。第1回から出場しているワールドカップでは6連覇を果たすなど、世界的に見ても女子野球大国と呼べる日本で、さらに女子野球全体を盛り上げていくためにできることとは――。

小西 他の国が真似しようと思えるモデルにならないといけないですよね。プロが一番上で、その次に社会人、クラブチームという体制が整えられた国にしたいです。一球団を熱狂的に強くしてくれる企業が現れたら、対抗してくる企業やチームやプロ球団が出てくるでしょうし、10〜20年後にはチーム数が増えると思います。

 まずは野球をできる環境を増やしていくことですね。女子野球の頂点は、三浦選手や岩谷選手が残る女子プロ野球なので。来季からシステムも変わって、もっとおもしろくなると思いますよ!生活が懸かっているので本気の勝負になりますし。ラグビーもそうですけど、本気のスポーツ選手を見るのって楽しいですよね。まずは来季がどうなるかが重要だと思いますし、今後の女子野球の鍵を握っていると思います。

岩谷 アマチュアのレベルも上がってきていますよね。女子プロ野球ももっとレベルを上げていかないと。

三浦 アマの選手にとっては、強いプロの選手と対戦することが目標になります。今回の報道を受けて、女子プロ野球に入りたかったのに、入りたくないと思う人が増えてもらいたくはないです。不安に思う選手を一人でもなくしていきたいし、来年1年間で女子プロ野球の新しい土台を築きあげたいと思います。

今年の入団テストでは8名の合格者が出た。三浦選手は「私たちの試合を見て女子プロ野球選手になりたいと思った子のためにも、目標でいたいですよね」と語る。夢や憧れを与える立場であり続けるためにも、まずはリーグの発展が不可欠だ。

小西 アマチュアのときは趣味の野球で、チームのみんなが楽しければ良かったんです。プロという名前がついた瞬間に趣味から使命感に変わりましたし、自分が持てるポテンシャルはすべて出し切らないといけないですよね。

 「プロってなんだろう」とずっと考え続けた10年でした。自分たちがプロの形を作って伝えていく立場だったので、とても良い仕事でした。何もないところから女子プロ野球が生まれて、10年、また10年と続いて歴史ができていくと思うので楽しみです。

三浦 いまだに野球は男子のスポーツという印象が強いので、野球をやっている女の子が当たり前になれば、もっと知ってもらえることになると思います。

岩谷 入団したときはただ野球がやりたくて入った感じでした。でも頑張ったぶんは評価してもらえるとわかったので、もっと頑張ろうと思えます。頑張ってお金をもらえることはすごいことですよね。それがプロという形じゃないですか。だから魅力のある世界ですよ、と書いてもらいたいです(笑)。

新たな10年を迎える女子プロ野球リーグ。4人が女子野球の未来予想図について語ってくれた。

 参加する企業が増えてくると、もっと競争が起きますよね。スポーツは競争しないとおもしろくないので、例えば1社1チームずつになったらもっとおもしろくなると思います。あとは、興味を持ってもらうことですよね。自分だったら裏側を知れるドラマがあれば楽しいと思いますし、それでファンの心は動く気がします。

小西 女子プロ野球リーグがビジネスになると思ったら、みんな飛び込んできますよね。うちの会社がやればもっともっと売り上げが上がるのに、と思っている会社がこの10年で確実に出てきていると思うので、そこが実際に加入する動きが出てきたら自然に盛り上がると思います。

三浦 やっぱり全員の個々のレベルを上げるのが大事かな。岩谷選手は京セラドームのフェンスに打球を当てるんですよ! そういう選手が何人も出てくることが、女子野球のレベルを上げることにつながると思います。

岩谷 去年も川端(友紀)選手がプロを引退するときに「(全体の)レベルが落ちる」とか言われたけど決してそんなことはなかった。誰かが辞めるということは、新しい力が台頭するチャンスがあるということ。そんな新陳代謝がプロの世界は大切だし、そのためにももっと女子野球の人口を増やしていかないといけないですよね。

最後に、女子プロ野球への想いを改めて語ってもらった。4人の想いは一致していた。

岩谷 ずっと継続してもらいたいです。何十年後かに大きく発展していて、私たちがやっていた記録が残っていたらいいですよね。

三浦 続いてもらわないと困ります(笑)。私のヒット数とかを目標にして、将来塗り替えていく選手がいたら嬉しいですね。

 本気で女子プロ野球を目指している女の子たちがたくさんいるんですよね。その子たちの夢のためにも、大事な場所です。あるべき場所だと思います。

小西 夢であり憧れの場所でないといけないので、プロという言葉にこだわってでも残さないといけないと思います。小さい子が「将来の夢は社会人女子チーム」とは言わないですよね(笑)。そこに来るのはぜったい「女子プロ野球選手」であるべきなので、どんな形であれこのリーグは日本に必要不可欠です。

立場は違えども、一丸となって女子野球を普及させてゆく。明るい未来のため――。4人は強い気持ちを胸に、それぞれの場所で前を向いて歩み続ける。

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